No.29 日本教育新聞でそろばん談義 in Tokyo
■日本教育新聞(10月2日発行)の紙面12pageで、「新時代の義務教育と『そろばん』の役割」をテーマに、京都大学理学研究科教授上野健爾さんと玉川大学通信教育部非常勤講師向山宣義さんの対談が収録された。
■新しい時代にふさわしい算数・数学教育はどうあるべきかについて、常に課題を明らかにし、方向性の策定に発言を続けているお二人で、そろばんによる学力創出を実現するためにはどう考え行動するべきかについて意見交換が行われた。
■上野先生の指摘は次のようなことであった。「現在の初等中等教育の算数・数学はそろばんの持つ利点や良さを生かしきれていない」「算数・数学への時代の要求の変化に対応し、そろばんの意義についても、計算が速くできるという実用的な側面だけでなく大きな視点でとらえる必要がある」「そろばんの計算道具としての役割は終わったという現実に立ち、新たな教育利用の可能性を探っていく必要がある」「計算の道具としての役割を終えた以上、珠算の算法(アルゴリズム)を学ぶというアプローチが必要である」
■続けて、「珠算は5・2進法に基づいているので、10進法を学ぶ上で役立つ。さらにそろばんは、アルゴリズムに従って計算していく過程を珠の動きとして見ることが出来る」「筆算とそろばんで計算することで、異なるアルゴリズムで計算しても同じ答えに到達することを理解させる題材になる」「なぜ答えがでるのか、問題をどう考えるのかという原則の部分を指導する『教具』としてもそろばんは使える。また、数を具体的に表し、数の感覚を身につける手段として生かせる場面はたくさんある」「中学校でも、実際にそろばんが出来るようにならなくても、仕組みを指導することに意義がある」
■今後のそろばんの教育利用については次のようにまとめられた。「まずはそろばんのどの側面に着目し教育に取り入れるのか、その位置づけを明確化することが大事」「さらに、そろばんの教育的な要素を取り出して小中学校の単元別に教材化し、現場の先生方に向けて情報発信していく必要がある」
■今後の算数・数学教育の変化と教師の役割についても、「数学の特徴は、抽象的であるがゆえに具体的な問題にも適用できることである」「数学を学ぶということは、今すぐ役に立つこと以上に、目に見えない基礎的な部分もたくさん身につけることにつながると思う」
■核心に触れる貴重な発言が多くあったが、ここではそのいくつかを紹介した。今後は、小中学校の先生方との共同研究という形でのコラボレーションが求められるのかなと感じている。
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